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コミュニティーでの犯罪

都市は、イノベーションや経済的生産性の拠点となることが多い一方で、犯罪や暴力、腐敗といった問題が、全国的水準以上に深刻化することもあります。強盗や性的暴力、不正薬物使用から人身取引その他の組織犯罪や腐敗に至るまで、都市は世界の問題の潮流を映し出す小宇宙となっています。

2050年までに、世界人口の3分の2は都市に暮らすことになると見られます。この都市化プロセスは、多くがアフリカとアジアで生じます。

都市住民の数が増えるにつれ、こうした課題は全世界の都市居住地で深刻化の一途をたどることでしょう。私たちは、都市の課題によりよく対応し、コミュニティーの強靭性を高める必要があります。

都市環境の中で、市民やコミュニティーを巻き込みながら、犯罪と腐敗の防止に向けた効果的かつ革新的な取り組みを発展させることが重要です。計画性に優れた戦略は、犯罪や被害、腐敗を防ぐだけでなく、持続可能な開発にも貢献するからです。

都市の犯罪と腐敗が人々に及ぼす影響

都市犯罪はさまざまな形で人々に影響を及ぼしかねません。例えば、貧困地域の若者は犯罪組織の暴力や地域の犯罪、薬物・アルコール乱用に巻き込まれるリスクがあります。このような犯罪は、薬物密売や小火器、組織犯罪など、その都市部以外に起因することもある脅威と密接に絡み合っています。基本的な政府サービスの提供に透明性が欠けていれば、最も脆弱な立場に置かれた人々の多くが水や衛生施設、医療サービスを利用できなくなるおそれもあります。

女性と女児にとって、都市化は教育と雇用機会へのアクセス改善や、自立性の増大と関連づけられることが多くあります。しかし、世界全体で、女性と女児は都市部の公的空間で依然としてセクシュアル・ハラスメントやその他の形態の暴力に直面し続けています。女性と女児の大多数がバスや電車、路上、市場、公園その他多くの場所で、何らかの形の侵害を受けている都市も多くあります。この事実はUN Womenの「安全なまちと安全な公共スペース:セーフシティ・セーフパブリックスペース」イニシアティブで明らかになりました。

犯罪や暴力の数は、経済的不平等、社会的な排除と分断、食料不安、ジェンダーの不平等、良好な社会的一体性の欠如など、都市の力学と特徴によって影響を受けます。また、人々が治安の悪化を感じ、不安と心配を抱いていたとしても、実際に犯罪の被害者になるというリスクとは別物である可能性もあります。

開発途上国と経済移行国では、都市住民の多くが過去5年以内に犯罪の被害を受けていることを示すエビデンスがあります。ラテンアメリカ・カリブとアフリカ地域の一部を対象とする調査では、回答者の70%が犯罪の被害者であることが明らかになっています。しかし、犯罪環境を生むのは都市部密集地帯の規模ではなく、むしろ不十分な都市化の計画、設計および管理であることを示す調査もあります。

持続可能な開発には、都市犯罪と腐敗への取り組みが重要

犯罪と暴力、腐敗を減らすことは、法の支配、グッドガバナンスと、これらサービスを提供する制度の強化とともに、人々の福祉に欠かせません。こうした要素は、持続可能な開発の確保にも重要となります。「持続可能な開発のための2030アジェンダ」は、目標11のターゲットを通じ、安全で包摂的かつ強靭な都市の促進をはっきりと強調しています。

地方自治体の役割は極めて重要です。人々に最も近い行政単位であるとともに、大きな政策決定と支出の権限を与えられていることも多いからです。よって、国連薬物犯罪事務所(UNODC)は、将来的なSDGsの成否の多くが都市にかかっていることを認識し、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」を都市部、特にグローバルサウスの政策・計画立案者向けに「ローカライズ」することに貢献しています。

国連薬物犯罪事務所(UNODC)は状況を改善するために何をしているか

UNODCは、コミュニティーにおける犯罪、暴力、腐敗、薬物使用に対する都市の取り組みを強化し、包摂的で安全かつ強靭なまちづくりを支援するイニシアティブ「UNODCity」を開発しました。各国の関係機関とともに現地のステークホルダーとも連携し、妥当なツールとサービスによるエンパワーメントを図っています。UNODCは「都市安全ガバナンス評価」を通じ、草の根のニーズを充足し、グローバルな犯罪の脅威とローカルな脆弱性との関連性に配慮するため、対応の適応を図ることもできます。また、腐敗や政府サービスにおける透明性欠如などの構造的問題に取り組むことにより、コミュニティーの強靭性を構築する必要性も強調しています。

ドーハ・プログラムは、犯罪組織や薬物乱用に誘い込まれかねない若者と子どもたちを支援するための「Line Up, Live Up」プロジェクトも開発しました。若者を対象とするこのグローバルな犯罪防止への取り組みは、若者が犯罪行為に巻き込まれることを防ぎ、効果的に強靭性を高められるよう支援するためのツールとしてのスポーツの力を活用しています。現在までに、アフリカ、中央アジア・中東、ラテンアメリカ・カリブ地域の12カ国の若者が、このプログラムに参加しています。

例えばウズベキスタンでは2020年2月、600人を超える生徒が「Line Up, Live Up」に参加し、犯罪に手を染めるきっかけとなりかねない社会的圧力に抵抗する方法を学んでいます。参加生徒は楽しい双方向型の運動を通じ、不安への対処の仕方や、仲間との効果的なコミュニケーションの取り方を考えました。アンディジャン出身の16歳のバフロンベックさんは、プログラムに参加できたことを喜んでいます。「将来の目標の決め方を学びました。このイニシアティブのおかげで、勉強する意欲も湧きました。これまではずる休みすることが多く、学校の授業にもあまり興味が持てませんでした。『Line Up, Live Up』に参加してからは、高等教育機関に進学するという目標を自分で決めることができました」。

あなたにできること

どこに暮らしていようとも、あなたの住む市町村のガバナンスと運営に積極的な関心を持つことはできます。どんな場所に住みたいのか、意見を述べてみましょう。自分が生活する建物や街並み、近隣地域に関するビジョンを描き、そのビジョンの実現に努めましょう。十分な仕事はあるでしょうか。あなたの子どもは徒歩でも安全に通学できているでしょうか。家族と一緒に夜道を歩くことはできるでしょうか。最寄りの公共交通機関の乗り場まで、どれくらいの距離があるでしょうか。どのような公的空間を共有できているのでしょうか。政府が提供する基本的サービスは、簡単かつ安価に利用できるでしょうか。

地域社会の環境が改善できれば、生活の質や安全に対する効果も大きくなります。地域密着型の犯罪防止活動に参加する機会を探してみるのもよいでしょう。

日常生活の中で、地域の貴重な知識を活用しながら、生活の場や仕事の場で起きることをどうすれば変えていけるのか、考えてみましょう。

警察と連携し、犯罪と暴力の防止に重要な貢献を行っている市民社会団体に関わることもできます。地域の問題に関する知識を備え、社会的に脆弱な立場に置かれた人々やリスクの高い人々に手を差し伸べる能力のあるコミュニティーの関与は、犯罪と腐敗はもとより、組織犯罪集団の増加を予防するうえでも欠かせない要素となります。

コミュニティーでの犯罪: 数字で見る動き

犯罪行為による死者の数は、紛争とテロを合わせた数よりも多くなっています。46万4,000人という殺人犠牲者の数は、2017年の武力紛争による死者8万9,000人、テロ攻撃による死者2万6,000人をいずれも大きく上回っています。

殺人率は全世界で低下しています。2017年には全世界の人口10万人当たり6.1人の殺人犠牲者がいましたが、これは1993年の7.4人よりも少なくなっています。

組織犯罪とギャングに関連する死者は、毎年6万5,000人に上ると見られます。

アジアは2017年の時点で、殺人率が最も低い地域となっています。

男女間の不平等とジェンダーに関する固定観念の結果、家庭は女性にとって最も危険な場所となっています。2017年に親密なパートナーやその他の家族に殺された女性の数は、5万人に上ります。

米州に関する数字を見ると、最大級の都市では殺人率が低下する一方、その他の場所では上昇していることがわかります。

2017年に全世界で起きた殺人事件の半数以上で、小火器が使われています。

全世界で記録されている殺人事件全体の約90%は男性によるもので、2017年に記録された殺人犠牲者の81%は男性と男児となっています。

統計はUNODC「殺人に関する国際研究2019」から抜粋