障害者
障害を持つ人々はしばしば社会の主流からはずされる。差別はさまざまな形態をとり、教育の機会を奪うような不公平な差別からもっと巧妙な差別、物理的、社会的障害を設けることによって隔離や孤立を図ることまでさまざまである。社会もまた損害をこうむる。障害を持つ人々の膨大な能力を失うことになり、それは人類を貧しくする。障害についての認識や概念を変えることは、社会のあらゆるレベルでの価値観を変え、理解を深めることを意味する。国連はその創設以来、障害を持つ人々の地位向上を目指し、彼らの生活を改善することに努めてきた。そうした人々の福祉と権利に対する国連の関心は、すべての人間の人権、基本的自由、平等に基づく国連創設の原則に由来するものである。
障害者の平等な機会、処遇、サービスへのアクセスを求めて行った30年に及ぶ権利の擁護と標準設定の努力に続き、総会は2006年、「障害者の権利に関する条約(Convention on the Rights of Persons with Disabilities)」とその「選択議定書(Optional Protocol)」を採択した。条約は、2008年に発効し、障害を持つすべての人々に適用されるあらゆるカテゴリーの人権や基本的自由を成文化している。条約は以下の原則に基づいている。固有の尊厳と個人の自立を尊重すること、差別されないこと、社会に完全かつ効果的に参加し、同時に社会に受け入れられること、人間の多様性の一部として障害者の差異を尊重し、かつ障害者を受け入れること、機会の均等、施設およびサービスの利用を可能にすること、男女の平等、障害のある児童の発達しつつある能力を尊重し、またそのアイデンティティを保持する権利を尊重すること、である。条約はとくに、権利が侵害されてきた領域、保護が強化されなければならない領域、そうした人が権利を行使できるようにするために適応が必要な領域に焦点を当てている。条約は、担当部局や独立監視機構などを通して条約の実施を監視するよう加入国に要請している。
「障害者の権利委員会(Committee on the Rights of Persons with Disabilities)」は、18人の専門家で構成され、条約の実施を監視する。条約の「選択議定書」の下に、締約国は、締約国による条約違反の犠牲者であると主張する個人からの苦情を審議する委員会の権限を認めている。障害者の視点や権利、ニーズを主流化するという標準フレームワークや国際のコミットメントは、2015年の「2030アジェンダ」と2013年に開催された総会の障害と開発に関するハイレベル会議の成果によってさらに強化された。国連システムの中にあっては、DESAが障害者に関するフォーカルポイント(www.un.org/disabilities)となり、また条約の締約国会議の事務局を務める。