本文へスキップします。

  • プリント

ここから本文です。

開発と平和のためのスポーツの国際デー特集シリーズ
スポーツの力を平和と開発のために
~第2回~ ユースリーダーシップキャンプ参加者へのインタビュー(イスラエル、日本)

1月20日(月)から30日(木)にかけて東京で開催された「第8回ユースリーダーシップキャンプ(YLC)」。11日間のプログラムの中で参加者はスポーツに関する様々なレクチャーやアクティビティー、さらには日本の文化体験などを通じて、「スポーツを通した開発と平和」を学びます。今回は、主にアジア地域から14カ国から30名が参加し、新たな仲間との出会いや、スポーツの持つ力を体感しました。未来のスポーツ界を担う若者の、生の声をお伝えします。

Dor Shaty (ドー・シャティー, イスラエル)

武道に魅了された青年が、ここ日本から遠く離れたイスラエルにいます。ドー・シャティーさんです。幼少期にタイの伝統武術であるムエタイを通じて武道を知ったドーさんは、次第に柔術やブラジリアン柔術、柔道、空手といった様々な武道を学び始めました。「いつかは自分の力で、武道を学ぶ機会に恵まれない人々に武道を教える場をつくりたい」という夢を描き始めたころ、一人の尊敬すべき「先生」に出会いました。その先生に、彼の思い描いていた指導方法・方針と一致した「Budo For Peace(平和のための武道)」の存在を聞かされ、そこでボランティアを始めました。「Budo For Peaceは、武道を教えるだけではないんです。自立、平等、尊敬、共存という人生に大切なことも教えています。主に僕は小林流(しょうりんりゅう)空手を教えています」こうしてひとりの尊敬できる先生に出会ったことがきっかけで、武道を伝える者としての道を歩き始めました。ドーさんはBudo For Peaceで指導者として、武道者としてのスキルを磨いています。

Budo For Peaceでは、参加者には自らが抱える問題を忘れ、社会的な課題からも解放されるよう指導しています。世界が自身らをどう見ようが、生徒が世界をどう捉えようが、武道を学ぶことにおいて皆、平等です。「イスラエルでは宗教に関する問題がいまだに残っていますが、Budo For Peaceは『誰が正しく、誰が間違っているか』という考えを越えて、『親切に、連帯し、尊敬しあうことが必要』という考えで常に活動しています」

仲間との議論が弾む
UNICインターンとドーさん(右下)

こうしたことを実践するドーさんは、「誰でも武道を学ぶことのできる青少年施設を作る」という夢を諦めてはいません。「このキャンプでの学びや出会いをこれからの自分の試みに生かしたいです。Budo For Peaceでさらなる経験を積んで、じっくり構想を練って夢を実現させたい」強い意気込みを持つドーさんのもとで、武術を通して平和を希求するたくさんの後輩たちが育っていくことが期待されます。

Anri Kubo (久保アンリ, 日本)

2020年東京オリンピック・パラリンピック開催が決まり、ますますスポーツの盛り上がりを見せる日本。そして日本の若者も、世界のスポーツリーダーの中で負けてはいません。YLCでも日本人が活躍していました。唯一の日本人参加者、久保アンリさんです。彼女は、筑波大学体育専門学群でスポーツを勉強しています。久保さんの出身はカヌーの盛んな石川県小松市。必然的にカヌーと出会い、のめりこんでいきました。カヌー以外にも体操や空手といったスポーツも幼少期から経験し、次第に大学でもスポーツを専門に勉強したいと思うようになりました。筑波大学は体育分野の研究でも有名です。久保さんは、部活動では大好きなカヌー競技を行いながらも、所属するスポーツ心理学研究室ではスポーツによる国際開発を学んでいます。まさに『スポーツ漬け』の毎日と言ってよいでしょう。

「スポーツの価値は、国・国境・文化・言語・宗教といったもの全てを越えて、様々な人とコミュニケーションを取ることができるところにあります」日々の学びでこのようにスポーツを捉える久保さんにとって、このYLCは最高の実践の場となっています。世界14カ国から30名の若者が、久保さんと同じように熱い思いを持って集まってきています。「スポーツという共通理解を持った仲間ではありますが、私にとって慣れない英語で意思疎通を図ることは難しいです。でも、いざ体を動かしてしまえば言葉の壁など忘れてしまいます」

参加者の前で手遊びを発表する久保さん(右から2番目)
言葉を越えて、サッカーを仲間と
笑顔で楽しむ

「自分の考える『スポーツの価値』を通じて、社会が良くなるように貢献できることはないかと思い、この分野を勉強しています」カヌーをはじめとしたスポーツ経験や、大学での学びをもとに、スポーツを通じて自分ができることを模索する久保さん。2020年の東京オリンピック・パラリンピックにも大きな期待を抱きます。「このタイミングで東京での五輪開催が決まったことは、スポーツを通じての平和構築や国際理解を進めるムーブメントの絶好の機会だと思います。今、スポーツに関わらないのはもったいないです。今後は研究室に進んで、スポーツのことをもっと勉強したいです」久保さんは、五輪の考え方を教育で広める「五輪教育」や、スポーツを通じた国際開発分野に興味があると言います。そして「将来は、スポーツの価値を通じて、何らかの形で社会に貢献したいです」と熱意を聞くことができました。このキャンプの経験や大学での学びを通じて、久保さんは日本のスポーツ界を支える立役者となってくれるでしょう。