開発と平和のためのスポーツの国際デー特集シリーズ
スポーツの力を平和と開発のために~第5回~ 国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の取り組み
中東におけるパレスチナ難民の支援を行っているUNRWAは、平和と対話を促す上でスポーツの力を活用しています。2014年に初めて実施される「開発と平和のためのスポーツの国際デー」に際し、UNRWAからスポーツと平和・開発に関する事業について伺いました。
1. 貴機関におけるスポーツの位置づけ・方針はなんですか
UNRWAが担当するパレスチナ難民の通う学校では、体育の授業が実施されています。UNRWAの教育改革では、すべての児童が等しく教育を受けられることを目標にしており、また学校保健の推進においても健康的な生活習慣の定着を目指しています。これらを踏まえ、すべての体育に限らずレクリエーションや運動にすべての児童が参加することが奨励されています。
2. 著名人の活用・実施状況があれば教えてください
世界保健デーや世界糖尿病デー、サマーキャンプなどの機会に俳優や有名スポーツ選手などを招待しています。2011年11月に、ガザ地区とヨルダン川西岸地区でのサッカーを通じたスポーツ推進のためにレアル・マドリッド財団とUNRWAが連携協定を結びました。サッカーを通じて、パレスチナ難民の子供たちはチームワークや自尊心を培い、また、運動をするという基本的な権利を謳歌しています。紛争に取り囲まれた子供たちにとって、サッカーのスター選手のような練習ができることは、困難な日常から抜け出すひと時をもたらしています。
3. 貴機関が行うスポーツに関するプロジェクトをひとつご紹介ください
a. プロジェクト名
国連児童基金(UNICEF)、ヨルダン教育省との連携による体育教員研修
b. 目的
健康的な生活様式と体育授業・体育活動への統合
c. 場所
ヨルダンにおけるすべてのパレスチナ難民が通う学校(UNRWA学校)
d. 期間
2011~2012年
e. 概要
パレスチナ難民が通う学校の体育教員125人が健康的な生活様式についての研修を受け、それらの体育の授業や体育活動への導入について学びました。
f. 評価・課題(これまでの成果を含む)
2012年5月にジェラシュ難民キャンプで行った評価では、教員、児童の両方から、健康的な生活(食生活、運動、衛生改善、清潔維持、コミュニケーション等)についての非常に前向きな態度が見られるようになりました。
4. スポーツの活用について、今後の展望を教えてください
- 学校保健の推進
- 健康的な生活様式についてのサマーキャンプ、イベント、競技大会(バスケットボール、ハンドボール、卓球など)の実施など
5. コメント(特に日本の若者へのメッセージや協力の呼びかけなど)をお願いします
UNRWAは、中東の5地区(ヨルダン、レバノン、シリア、ヨルダン川西岸、ガザ地区)において、1950年からパレスチナ難民の支援を続けています。特にシリアでの混乱が激化している昨今、そこに住むパレスチナ難民の生活も厳しい状況が続いています。パレスチナ問題が発生してから60年以上が経過した現在に至っても、約500万人ものパレスチナ難民がいることを日本の人々には忘れないで欲しいと願っています。日本のパレスチナ難民に対する支援は、日本政府、国際協力機構(JICA)および民間企業、NGOが継続して行なっています。
JICAはUNRWAが運営する学校にとって貴重なパートナーであり、青年海外協力隊員がパレスチナ難民の体育教育のために大きく貢献しています。JICAはUNRWAが運営する小・中学校に青年海外協力隊員を派遣しており、体育のほかにも美術や音楽などの情操教育支援をしています。現在ヨルダンでは常時15名前後の隊員が活動しています。基本的には、日本の体育の授業をベースにUNRWAが運営する学校の教員として、UNRWAのパレスチナ人教員とともに働き、体育教育の改善を図っています。
シリアで内戦が勃発する前は、そこで暮らすパレスチナ難民のためにも隊員が派遣されていました。サッカー大会、女子ソフトボール大会、コンサートなども隊員のイニシアチブで開催されていました。