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持続可能な開発出典「国連の基礎知識」

UN Photo/Eskinder Debebe

国連創設後の最初の数十年は、環境問題が国際的な議題になることはほとんどなかった。環境に関連した国連活動で強調されたのは天然資源の探査と利用であった。それと共に、とくに開発途上国が自国の天然資源を管理できるようにすることも求められた。1960年代、海洋汚染、とくに油のたれ流しの問題についていくつかの合意が見られた。それ以降、グローバルな規模で環境の悪化を示す例が増え、国際社会は開発が地球の生態系と人間の福祉に影響を及ぼしていることについて警報を拡大させてきた。国連は環境問題についての唱道者となり、かつ「持続可能な開発」について指導的役割を果たすようになった。

経済開発と環境の劣化との関係が初めて国際的な議題となったのは、1972年にストックホルムで開催された「国連人間環境会議」においてであった。会議の終了後、加盟国政府は国連環境計画(United Nations Environment Programme: UNEP)(www.unep.org)を設立した。UNEP は世界の主導的な環境機関となった。

1973年、西アフリカの砂漠化防止活動の先頭に立つ機関として「スーダン・サヘル事務所(United Nations Sudano‒Sahelian Office: UNSO)が設置された。現在はUNDPの「乾燥地帯開発センター(Dryland Development Centre)」となり、グローバルな任務を帯びるようになった。1996年に「深刻な干ばつ又は砂漠化に直面する国(特にアフリカの国)において砂漠化に対処するための条約(Convention to Combat Desertification in those Countries Experiencing Serious Drought and/or Desertification, Particularly in Africa(1994年)=国連砂漠化防止条約」が発効し、砂漠化防止の活動に新たな弾みが与えられた。

1980年代には、オゾン層の保護や有害廃棄物の取り締まりに関する条約など、環境問題については画期的な交渉が加盟国の間で行われた。総会が1983年に設置した元「世界環境開発委員会(World Commission on Environment and Development)」の作業によって、新しいタイプの開発の必要性が新たな緊急感と共に理解されるようになった。世界の環境資源を保護する一方で、現在および将来の世代のために経済的福祉をもたらすような開発である。委員会は1987年の総会に宛てた報告のなかで、自由な経済成長だけに基づく開発に代わるものとして「持続可能な開発」という新しい概念を提唱した。総会はその報告を審議し、国連環境開発会議 ―地球サミット― の開催を要請した。地球サミットは1992年、ブラジルのリオデジャネイロで開催された。その規模、範囲、影響、すべて未曾有の出来事であった。地球サミットは、持続可能な開発を人権、人口、社会開発、人間居住の問題と結びつけた。

持続可能な開発とは、「将来の世代の欲求を満たしつつ、現在の世代の欲求も満足させるような開発」と定義づけられているが、人々と地球のために包摂的、持続可能な、レジリエント、すなわち強靭な未来を築くことを求めている。この目的を達成するために三つの核心的要素、すなわち経済成長、社会的包摂、環境保全を個人と社会の福祉のために必要な要因としてその調和を図ることが不可欠である。国際連合は、持続可能な開発の概念をそのすべての政策や事業に反映させるような措置をとってきた。これまでにも増して開発援助は女性に向けられている。これは、商品、サービス、食糧の生産者として、また環境の世話人として女性の役割は持続可能な開発にとって不可欠であるからである。貧困の解消と環境の質は密接に関連しているとの認識も高まっている。こうしたことから、貧困解消の道徳的かつ社会的要請は一層の緊急性が与えられている。