飢餓をゼロに
飢餓を終わらせ、食料安全保障および栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進する。2016年SDG報告によると、飢餓に苦しむ人口の割合は2000‒2002年の15パーセントから2014‒2016年の11パーセントへと減少した。しかし、世界全体で7億9000万人以上の人々がいまだに適切な食料を入手できない状態にある。サハラ以南のアフリカでは成人人口の半数以上が、2015年に、中程度もしくは厳しい食料不足に直面した。世界的には、2014年、5歳以下の子どもの場合、4人に1人が発育不全であった。その数は1億5900万人にも達した。子どもの栄養不良が持つもう一つの側面は、肥満児童の数が増えていることである。これはほとんどすべての地域にみられる問題である。2014年には5歳未満でおよそ4,100万人の子どもたちが体重超過であった。そのうちの半数がアジアに住んでいる。もし人間を中心とした農村開発を適切に行い、環境を保護するならば、農業や林業、漁業が栄養ある食料をすべての人々に提供し、人並みの収入を生み出すことができる。
飢餓との闘い
食糧生産は1945年に国連が設立されて以来未曽有の勢いで増加してきた。今日、地球上のすべての子ども、女性、男性に食物を与えるに十分な食料がある。1990年代初めから2016年にかけて、世界の人口が19億人も増加したにもかかわらず、飢餓人口の数は世界的に2億1600万も減少した。FAOがモニターした国の大多数はMDGsの目標に達し、2015年に飢餓人口の数を半数にした。それにかかわらず、2016年に十分に食べることのできなかった人の数はおよそ7億9300万人にも達した。進展はしているものの、紛争や政治的不安定、災害などに阻まれることが多く、危機が長引く。SDG 2は飢餓とあらゆる形態の栄養不良を終わらせ、2030年までに持続する食料生産を達成するよう国際社会に求めている。
飢餓と闘う国連機関のほとんどは、とくに農村地域の貧しい人口層を中心に、食料安全保障を強化する社会的保護計画を進めている。その設立以来、FAOは、貧困と飢餓を根絶する活動を続け、そのために持続可能な農村・農業開発を進め、栄養の改善や食料安全保障の実現に努めてきた。食糧安全保障とは、すべての人が活動的かつ健康的な生活を営むために必要な食事や嗜好を満たす十分で安全で栄養価に富む食事を常に実際的かつ経済的に入手できるようにすることである。
FAOの「世界食糧安全保障委員会(Committee on World Food Security)」は、国際の食糧安全保障状況について監視し、評価し、協議する。委員会は国際的な政府間プラットフォームで、すべてのステークホルダーがすべての人に食糧安全保障と栄養を確保するためにともに働けるようにする。委員会は食料の安全保障と栄養の幅広い問題について政策の提言やガイダンスを行う。
全地球情報早期警報システム(Global Information and Early Warning System)(www.fao.org/giews)は、衛星を利用して食料の供給と需要、その他の指標を監視し、世界のすべての国の食糧安全保障状況を評価する。食糧の供給に潜在的な脅威が生じた場合はそれについて国や援助国に注意を呼びかける。FAO本部はまた「農業市場情報システム(Agricultural Market Information System)の事務局を務める。これは政府間のプラットフォームで、市場の先行き不確実性に応えて市場の透明性や行動を推進する。また、もっとも影響を受けやすい人々のために食糧の価格危機と闘う。
FAOが主催した2009年の「食料安全保障に関する世界サミット」は、できるだけ早い時期に飢餓を撲滅するようすべての国に訴えた宣言を採択した。また、気候変動が食料の安全保障にもたらす課題に取り組むことに合意した。
国際農業開発基金は、世界のもっとも貧しい地域で飢餓と闘うための開発資金を提供する。1日1ドル未満で生活する世界のもっとも貧しい人々の大多数は、開発途上国の農村地域に住んでおり、農業やそれに関連した仕事によって生計を立てている。開発援助がそれをもっとも必要としている人々に届くようにするために、IFADは、貧しい農村の男女を開発に直接参加させ、彼ら自身やその組織との共同で、自分たちの地域社会で経済的に自立する機会を作り出せるようにする。
世界食糧計画(World Food Programme: WFP)(www.wfp.org)は、もっとも必要としている人々にまず焦点を合わせながら、グローバルな飢餓と栄養摂取の問題に取り組む国連の第一線で活躍する機関である。2015年、WFPは81カ国の7,670万人以上のもっとも弱い立場にある人々に食糧援助を行った。さらに160万人の人々が、ほとんどがホスト国の支援による、信託基金の資金援助を受けた。WFPは毎年200万トン以上の食料を購入する。WFPは、援助を必要としている国に最も近いところから食糧を購入することをその政策としているが、そのことは少なくとも食糧援助の少なくとの4分の3が開発途上国から調達されることを意味している。現地で購入することは、輸送の時間と費用を節約するばかりか、現地経済の強化に貢献する。
WFPの飢餓との戦いは緊急援助、救援と復興、開発援助、特別の支援活動に焦点を当てている。緊急事態が発生すると現地に最初に現れのがWFPであることがしばしばで、戦争や内戦、干ばつ、洪水、地震、ハリケーン、作物の凶作、自然災害の被災者に食糧を届ける。緊急事態が治まると、WFPは食糧を使って地域社会がその破綻した生活や生計を再建できるように支援する。
食糧と食糧関連の援助は、開発途上国の多くが追い込まれている飢餓と貧困の連鎖を断ち切るもっとも効果的な方法の一つである。WFPの開発プロジェクトは、学校給食のようなプログラムを通して、とくに母親や子どものための栄養摂取に焦点をあてている。WFPは50年以上にわたって学校給食計画を実施できており、今ではそれを行う世界最大の人道支援機関である。毎年、WFPは63カ国を超える国々で2000万から2500万人の児童に学校給食を提供し、もっとも到達困難な地域であることもしばしばである。2015年、WFPは62カ国のおよそ6万3000校の1,740万人の生徒に食事を提供した。WFPは調理済みの食事、スナック菓子、そして / もしくは持ち帰りの食料を提供する。これは、子どもたち、とくに女子が常にクラスに出席できるようにするためである。学校給食は子どもが1日に受け取る唯一の食事であることがしばしばである。学校給食は授業に集中するために必要な栄養とエネルギーを子どもたちに与えるばかりではなく、両親にとって子どもたちを学校へ行かせるための強い動機にもなる。さもなければ、子どもたちを家において働かせることになるからである。また、学校への出席、在席、卒業の率を高める。このことは女子の場合とくに重要で、さもなければ早くに結婚させられることになる。WFPは、地域社会や現地政府との連携で学校給食に使われる食糧はできるだけ現地の小自作農家から調達するようにしている。
2015年、WFPは2番目に高い水準の任意の拠出金を受けた。およそ48億ドルである。支出の79パーセントは緊急援助へ回される。およそ126億食の食料が、一食当たり平均0.31ドルの費用で供給された。現金ベースの送金は6億8000万ドルに達し、960万人の人々が援助を受けた。2014年に比べ8パーセントの増加である。