貧困をなくそう
あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる。2000年以来、多くの開発途上国が多様の事態に保護を提供する政策を採択したこともあって、世界を通して社会的保護が拡大した。「2016年持続可能な開発目標報告」によると、極度の貧困ライン以下、すなわち、2011年米ドル購買力平価を利用して1人当たり1ドル90セントもしくはそれ以下で生活するグローバルな人々の割合は、2002年から2012年までに間に26人から13人と半数に下がった。しかし、いまだに、サハラ以南のアフリカにおいては貧困が広く見られ、住民の40パーセント以上が、2012年現在、1日1.90ドル以下で生活していた。
進展が見られたにもかかわらず、社会的支援もしくは社会的保護の便益を受けられた人は、高・中所得国では3人に2人の割合であったのに対し、低所得国では5人に1人であった。
2015年、世界の労働者とその家族の10パーセントは1日1人当たり1.90ドル以下で生活していた。これは2000年に比べて28パーセントの減少である。しかし、2016年SDG報告によれば、15才から24才までの若者が低収入労働者の中に入る可能性が高く、2015年には若者の就業者の16パーセントが貧困ライン以下の生活をしていた。成人就業者の場合は9パーセントであった。
世界の指導者はSDGsを採択するにあたって国際アジェンダのトップに貧困削減の問題を持ってきた。とくに目標1は、極度の貧困も含め、いかなる形態の貧困も終わらせ、平和と繁栄を確保する普遍的な行動を求めている。国連開発計画(United Nations Development Programme: UNDP)(www.undp.org)は、貧困の削減を主要な優先事項としてきた。UNDPは、貧困の原因となる広範な要因に対処できるように政府や市民社会組織の能力を強化することに努めている。たとえば、食糧安全保障を強化すること、雇用の機会を創出すること、人々が土地や融資、技術、訓練、市場にアクセスできるようにすること、住居や基本サービスの提供を改善すること、そして人々が自分たちの生活を形成する政治に参加できるようにすること、などである。UNDPの貧困撲滅活動の基本的な動機は、貧しい人々の能力を向上させることである。
農業と農村開発
世界人口のおよそ半数が農村地域に住んでいる。ほとんどの人はその生計を直接的または間接的に農業から得ている。実際、世界のもっとも貧しい人々の大多数は農村地域に住んでいる。工業化や都市化へ急ぐあまり、農業部門へは十分な投資が行われなかった。国連は様々な方法でこの不均衡を正そうとしている。
国連食糧農業機関(Food and Agriculture Organization of the United Nations: FAO)(www.fao.org)は、飢餓、栄養不良、貧困のない世界、食糧と農業が持続可能な方法ですべての人々の生活水準の改善に貢献できるような世界の実現を目指している。食糧と農業は持続可能な開発へのカギであり、2030アジェンダの達成に不可欠である。FAOは持続可能で包摂的な農業・農村開発を進め、少ない労働量で多くを生産できるようにする。持続可能な食料と農業のためのFAOの枠組みは、SDGs実施に必要な五つの要素を特徴としている。
- 資源の利用の効率を改善する
- 自然生態系を保存、保護、強化する
- 農村の生計、正当な権利、社会福祉を保護、改善する
- 人々、共同体、生態系の強靭性(レジリエンス)を強化する
- 自然、人間のシステムを超えて責任ある、かつ効果的な統治メカニズムを促進する
FAOは現在常時世界の各地でおよそ2,000件のフィールド・プロジェクトを進めている。統合された土地管理プロジェクトや緊急対応から森林や市場戦略に至るまで、政府への政策や計画作成についての助言を提供することにまで及ぶ。
FAO投資センターは、国際融資機関(IFIs)とのパートナーシップのもとに、農業や農村の開発に対する投資について各国を支援する。1964年以来、センターとIFIパートナーは2,100件以上のプロジェクトに対して1,150億ドルを超す農業・農村開発への投資を可能にした。その額のうち、740億ドルはIFIの融資を受け、残りは受益国が負担した。
国際農業開発基金(International Fund for Agricultural Development: IFAD)(www.ifad.org)は、農村に住む人々が貧困を克服できるようにする農業開発計画やプロジェクトに融資する。IFADは、貧しい農村の人々の経済的向上と食糧の安全を促進する計画やプロジェクトに融資やグラントを提供する。IFAD支援のイニシアチブによって、こうした人々が生産的な農業を行うために必要な土地、水、財政的資源、農業技術とサービスを受け、かつ収入を増やす一助となる市場や企業の機会を利用できるようになる。
IFAD支援のプログラムやプロジェクトから恩恵を受ける者は、世界でもっとも貧しい人々である。すなわち、小農、農村で土地を持たない人、遊牧民、昔ながらの漁業社会、先住民であり、そしてすべての社会層を通して貧しい農村の女性である。IFADは、農村の貧困と食料不足を解消することによってSDGsを達成できるように努めている。そのため、小自作農が生産性と収入を増やせるようにする投資、農村女性のエンパワーメントの支援、包摂的、多様な、生産的な農村経済の育成、持続可能な農業と気候変動に対する小自作農の適応能力への投資、地方公共機関や天然資源統治の強化、などを行う。
1978年の設立以来、IFADは、農村開発のためにおよそ253億ドルの協調融資や現地の資金調達を動員するとともに、融資やグラントの形でさらに176億ドルの支援を行った。これまで、123の受益国政府とのパートナーシップのもとに1,013件のプログラムやプロジェクトを支援した。