質の高い教育をみんなに
すべての人に包摂的かつ公正の質の高い教育を確保し、生涯学習の機会を促進する。進歩がみられるものの、2015年までに普遍的な初等教育を実現するとのMDGを達成することができなかった。2013年、5,900万の子どもたちは小学校の学齢期であるにもかかわらず、未就学であった。これらの子どもたちのうち、5人に1人は中退者であった。最近の傾向では、未就学児童の5人に2人は教室に足を踏み入れることがないことを示している。2013年にはまた、15歳以上の成人で読み書きができない人は7億5700万人にものぼった。そのうちの3分の2は女性であった。普遍的な小中等教育の約束を果たすには、新しい小学校教師が必要で、推定によると2030年までに2,600万人近くの教師が必要となる。この件に関してはアフリカが最大の挑戦に直面している。10カ国のうち7カ国近くでは訓練を受けた小学校学校教師が不足しており、深刻な問題となっている。
調査によると、教育へのアクセスと改善された社会指数との間に密接な関係があることが分かる。学校教育はとくに女性に対して特別の相乗効果を持っている。たとえば、教育を受けた女性は典型的により健康であり、子どもの数が少なく、家計収入を増やす機会を多く持つ。そうした女性の子どもは死亡率が低く、栄養状態も良く、おおむね他と比べて健康である。少女や女性が国連全体で多くの教育計画の対象となっているのは、こうした理由からである。
SDG 4は、基礎的な、高次技能の取得、技術・職業訓練と高等教育への公平なアクセス、生涯の訓練、十分に役割を果たし、かつ社会へ貢献するために必要な知識、技能、価値観に焦点を当てている。教育にはさまざまな要素が絡み合っていることから、国連システムの多くの機関は多種多様な教育・訓練計画の資金援助や開発を行っている。
教育の領域での先導機関は国連教育科学文化機関(United Nations Educational, Scientific and Cultural Organization: ユネスコ)(www.unesco.org)である。ユネスコは他のパートナー機関と共に、すべての子どもが子どもにやさしく、良質の教育を行うように訓練された教師のいる学校で学ぶことができるようにすることを目指している。ユネスコの教育部門は、あらゆるレベルで、すべての人に教育を提供すること、特別のニーズを持つ人々と社会の主流から取り残された人々の成功、教師の養成、労働人口の能力の育成、教育による成功、非公式生涯教育の機会確保、教育および学習を向上させる技術の利用、教育の機会の拡大に焦点を当てている。ユネスコは教育のあらゆる側面を取り上げる任務をもつ唯一の国連機関である。ユネスコは、2015年5月に開かれたを世界教育フォーラムで採択されたインチョン宣言を通して、そのパートナー機関とともにグローバルな「教育2030」アジェンダを先導かつ調整する任務を与えられている。SDG 4の10の目標を達成するための行程表は「教育2030行動枠組み(FFA)」で2015年11月に採択された。いかにしてコミットメントを行動に変えるかについてのガイダンスを政府やパートナー機関に提供している。
第4のSDG「質の高い教育をみんなに」を宣言したことに加え、国連は教育の分野で数多くのイニシアチブを進めてきた。毎年、何百回という模擬国連がさまざまな教育レベルで、様々な形で開かれる。模擬国連世界大会(Global Model United Nations Conference)(www.un.org/mun)もその一つである。こうしたプログラムを通して、学生は外交官として行動し、国連総会や他の国連システム機関模擬会期に参加する。
国連アカデミック・インパクト(United Nations Academic Impact:UNAI)(https://academicimpact.un.org/)は、高等教育機関と国連とが連携して知的な社会的責任という共通の文化の中で活動や研究を行うためのイニシアチブである。UNAIメンバーは国連憲章固有の原則を実践することを誓う。すなわち探究、意見、言論の自由を含む人権;ジェンダー、人種、宗教もしくは民族に関係なくすべての人々の教育の機会;高等教育の追求のために必要な技能と知識を得るための機会、高等教育における能力の強化;平和と紛争解決の向上;貧困問題の取り組み;持続可能性の促進;異文化間対話と理解の促進である。2010年の発足以来、UNAIはおよそ120カ国の1,200以上の機関で構成されるまでに成長した。