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人道支援活動の調整出典「国連の基礎知識」

UN Photo/Fardin Waezi

1990年代以降、内戦が頻発し、規模も激しさを増した。アフガニスタン、イラク、シリアでの紛争は大規模な人道危機の原因となった。複雑な政治的、軍事的状況のもとにあって、多くの命が失われ、大量の避難民が発生し、社会への損害も広範なものであった。1991年、総会は機関間常設委員会を設置し、人道的危機に対する国際社会の対応を調整させることにした。国連緊急援助調整官(United Nations Emergency Relief Coordinator)はこうした活動における国連の中心的存在で、人道的緊急事態に関しては国連全体の主席政策顧問であり、調整官であり、また唱道者である。緊急援助調整官はまた人道問題調整事務所(Office for the Coordination of Humanitarian Affairs: OCHA)の長も務める(https://www.unocha.org/)。

一般的に、政府や非政府組織(NGO)、国連の諸機関など、国際社会には多くの主体があって、複雑な緊急事態に対しては同時に対応しようとする。OCHAはこれらの主体と協力して、それぞれの主体が全体の活動に迅速かつ効果的に貢献できるようにする一貫した救援の枠組みをつくる。OCHAは加盟国や機関間常設委員会(Inter‒Agency Standing Committee: IASC)(https://interagencystandingcommittee.org/)のメンバーと協議し、活動の優先順位を決める。IASCは国連と国連以外の人道パートナー、すなわち、国連諸機関、赤十字・赤新月社運動、それにNGOの代表を一つにまとめる統括組織である。OCHAはまた、突然始まった危機の際には緊急対応チームを派遣し、文民・軍事の活動を調整する。自然災害や突発性の緊急事態が発生すると、12時間から24時間以内に国連災害評価調整チーム(United Nations Disaster Assessment and Coordination: UNDAC)を派遣し、情報を収集し、ニーズを評価し、国際援助の調整を図る。OCHAの現地事務所はニーズの評価や災害対策プランニング、救援計画の策定の調整を支援する。OCHAは食料の配布から給水、保護まで、それぞれの人道対応要因がすべて達成されようにする。

財政支援

人道的対応活動を支援する資金は2006年の48億ドルから2016年の220億ドルへと増加した。OCHAは人道上のニーズを数字にして発表し、援助国が報告する資金を追跡し、緊急資金が必要な時にはいつでも対応できるようにする。OCHAはオンラインによる金融追跡システム(https://fts.unocha.org/)と「グローバル人道支援概観」を管理している。また、誓約会議を主催し、緊急時の資金へ迅速にアクセスできるようにする二つのプールされた資金メカニズムのインフラを管理している。

国連中央緊急対応基金(Central Emergency Response Fund: CERF)」(www.unocha.org/cerf)は年間4億5000万ドルの支出を行うグローバルな基金で、突然発生した危機、既存の緊急事態において状況が急速に悪化している場合、または資金不足の緊急事態に対して、迅速に対応できるような体制にある。迅速な対応の窓口が国連機関に与えられ、自然災害や市民を脅かす急速な暴力の拡大のような緊急事態に対応できるようになっている。例えば、西アフリカで発生した2014年のエボラ出血熱、2015年4月のネパール地震、2016年にイラクで発生した対立と軍事行動などである。2016年12月の年次CERFハイレベル会議でおよそ33カ国とその他の支援者が2017年度事業費として2億7300万ドルの誓約を行った。2006年に設置されて以来、CERFはこれまで94カ国で活動する人道支援機関に対して42億ドルの資金援助を行った。

現在、世界に18の国別のプール金(CGPF)があり、毎年5億ドル以上――政府と民間ドナーから――の資金を特定の国で人道活動を支援する国連機関やNGOへ割り当てている。CERFとこれらの国ベースの基金との間で、OCHAは年間人道援助に10億ドル近くの支払いを調整する。

情報管理

緊急事態において、効果的対応を確保するためにもっとも重要な要素は人道的情報とデータの収集と保存、管理である。現場では、OCHAの情報マネジャーは、パートナーとともに、もっとも危機的な人道上のニーズを決定し、誰がどこで何をしているかの情報を各機関に提供する。この情報は、「ReliefWeb」(www.reliefweb.int)のようなグローバルな報告のプラットフォームへアップロードされ、対応の調整に情報が利用されるようにする。OCHAは、データ革命の最前線にいる。これまで「人道的データの交換(Humanitarian Data Exchange)」(https://data.humdata.org/)を発足させ、「コボツールボックス(KoBoToolbox)」(www.kobotoolbox.org)は、重要な人道上の情報をより早く収集し、配布する。OCHAとその他の人道パートナーは、より多くの命を救い、人道的ニーズを軽減させるために、情報報告のスピードと効果をさらに向上させる方法に取り組んでいる。

世界人道サミット

2016年5月、事務総長は世界最初の「世界人道サミット」をトルコのイスタンブールで開催した(www.agendaforhumanity.org/summit)。180加盟国やNGOs、市民社会、危機被害の住民、民間部門、国際部門からおよそ9000人の代表が参加した。人道的コミュニティは、被災した人々のニーズに応えるために、変化する状況によりよく対応できるように、これまでの作業方法を変えることに決議した。「人道への課題」とその五つの核となる責任を支持して3000件以上のコミットメントが行われた。五つの核となる責任とは、紛争を予防し、終わらせること、戦争の法律を尊重し、かつ人々を守る規範を支えること、ニーズを終わらせるために異なる方法で取り組むこと、誰一人取り残さないこと、人道へ投資すること、である。

アドボカシー

OCHAは危機的な人道問題についての認識を高めるためにグローバルなキャンぺーンを実施している。国内避難民が直面する課題、援助要員の安全、「人道への課題」のもとになされたコミットメント、こうしたことが大きな問題となっている。OCHAはまた、国内および国際の報道機関を利用して、現地の人々が直面する問題、例えば人道的アクセスの制限、資金不足、とくに脆弱な特定の地域もしくは人々、こうしたことに関しても唱道を続けている。