子どもの権利
毎年何百万という子どもたちが栄養不良や病気のために死んでいる。その他数え切れないほどの子どもたちが戦争、自然災害、HIV/エイズ、それに最悪の形態の暴力、搾取、虐待の犠牲となっている。何百万という子どもたち、とくに女児は質の高い教育を受けられない。国連児童基金(United Nations Children's Fund: ユニセフ)、それに国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)、その他の国連機関は、「子どもの権利に関する条約(Convention on the Rights of the Child)」に対するグローバルな公約を持続させることに努めている。子どもの権利条約は子どもに対する行動の普遍的な倫理的原則と国際的な行動基準を定めたものである。ユニセフは、非常に危険かつ虐待的な状態の下で働く子どもたちに教育やカウンセリング、ケアを提供するプログラムを支援し、かつ子どもたちの権利の侵害についてはその救済を積極的に進めている。
子どもの権利委員会(Committee on the Rights of the Child)は条約のもとに設置された委員会で、18人の独立した専門家で構成される。定期的に開かれて条約による義務の実施について締約国が行った進捗状況を審査し、これらの義務をいかに果たすかについて政府に勧告する。また、条約の規定についての解釈を一般的コメントの形で発表する。
総会は2000年、条約に対する二つの選択議定書(Optional Protocols)を採択した。一つは18歳未満の子どもを軍隊に徴兵することや武力紛争に参加させることを禁じ、もう一つは子どもの売買、売春、ポルノの禁止や処罰を強化している。2011年に総会が採択した3番目の選択議定書は、2014年に発効した。個々の子どもが条約および前記二つの選択議定書が規定する権利が侵害された場合にその苦情を提出する通報手続きを決めている。
子どもの労働の問題に関して国連が求めていることは、子どもの身体的、精神的発達を損ねるような労働搾取や危険な労働から子どもを守り、子どもが良質の教育、栄養、保健サービスを受けられるようにし、かつ長期的には子どもの労働を漸進的に無くしてしまうことである。「国際児童労働撤廃計画(International Programme on the Elimination of Child Labour)」は、国際労働機関(ILO)が発案した活動で、技術協力を通して啓発活動や行動の動員を図る。直接介入には、子どもの労働防止、子どもの労働者の両親にディーセントな仕事を紹介するなどの代替措置の提供、子どもの社会復帰、教育、職業訓練などがある。ユニセフは、非常に危険かつ虐待的な状況の中で働く子どもたちに教育、カウンセリング、ケアなどを提供する活動を支援し、子どもの権利の侵害についてはその救済を積極的に進めている。
国連総会と人権理事会は、子どもの権利、とくに困難な状況の下にある子どもの権利を擁護、促進するための行動をとるよう各国政府に要請した。また、子どもに特別の保護と援助を提供する計画と措置を実施するよう各国に要請した。それには健康管理、教育、社会サービスへのアクセスや、(適切な場合は)とくに同伴者のいない子どものために、自発的な帰還、再統合、家族の追跡、離散家族の再会なども含まれる。両機関はまた、子どもの最善の利益が第一に考慮されるようにすることをすべて国に要請した。
子どもの売買、売春およびポルノに関する特別報告者、それに子どもへの暴力に関する事務総長特別代表、子どもと武力紛争に関する事務総長特別代表は定期的に総会と人権理事会に報告する。後者はまた安全保障理事会にも報告する。
子どもへの暴力に関する事務総長特別代表のポストは、2007年に設置された。これは、その前の年に総会に提出された「子どもへの暴力に関する世界報告書」を受けて設けられたポストである。報告書は、子どもに対するあらゆる形態の暴力のすさまじいまでの規模や影響を初めて明らかにした。家庭と家族、学校、ケアと司法機関、仕事場、地域社会など、異なる状況においても問題は普遍的で大きいことが強調された。その12の重要な勧告と多くの特定の勧告は、フォローアップ・アクションのための包括的な枠組みを提供している。子どもと武力紛争のための事務総長特別代表のポストは、1996年に3年の任期で総会によって設置されたが、その後その任期は更新を続け、もっとも最近では2015年にさらに3年間延長された。