女性の権利
1945年に国連が創設されて以来、女性の平等という問題は国連の重要な活動の一つとなってきた。女性の権利の促進と擁護や女性に対するあらゆる形態の差別と暴力の撤廃を目指したグローバルな闘いの中で、国連は常に主導的な役割を果たしてきた。また、女性が経済社会開発や政策決定など、政治や公的な活動に完全かつ平等にアクセスし、かつ参加の機会を与えられるように国連は努力を続けてきた。
2010年、総会は「UN Women、ジェンダー平等と女性のエンパワーメントのための国連機関(UN Women, United Nations Entity for Gender Equality and the Empowerment of Women: UN‒Women)」(www.unwomen.org)を設置した。これは国連改革の一環として行われ、これまでの各種機関と任務を一つにまとめてその影響力を大きくするためのものであった。UN‒Womenは女性や女児のための機会を拡大し、世界中の差別の問題に取り組むことを目的としている。ジェンダーの平等に関するグローバルな基準と規範を策定する政府間機関を支援することは、UN‒Women の主要な役割の一つである。UN‒WOMENは、女性のエンパワーメント、権利とジェンダーの平等を進めるために数多くの公共のアドボカシー・キャンペーンを行っている。その「2030年までにプラネット50‒50平等な地球社会:ジェンダー平等を加速させよう(Planet 50‒50 by 2030: Step It Up for Gender Equality)」は、2030年までに持続可能な開発目標を達成するのを支援するキャンペーンである(www.unwomen.org/en/get-involved/step-it-up)。2016年後半までには100カ国近くの政府がこのキャンペーンに関連して女性のエンパワーメントを前進させるとの具体的なコミットメントを行った。UN‒Womenは「UNiTE女性に対する暴力撤廃(UNiTE to Ed Violence against Women)」キャンペーンを進めている(https://www.unwomen.org/en/what-we-do/ending-violence-against-women/take-action/unite)。これは、世界のあらゆる地における女性と女児に対するあらゆる形態の暴力について社会の認識を高め、政治的意思と資源の強化を図って防止及び撤廃を進めるキャンペーンである。HeForSheキャンペーン(www.heforshe.org)は、とくに男性と男児を目標に、UN‒Womenが進めるジェンダー平等のための連帯運動である。2016年後半に110万人が署名したこのキャンペーンには、トップから変革を進めるべく、10カ国の元首もしくは首脳、10人のグローバルなCEO, 10人の大学学長も参加した。
女性の地位委員会(Commission on the Status of Women)は、女性の平等と差別撤廃のための国際的なガイドラインや法律を作成してきた。その顕著な例が1979年の「女子に対するあらゆる形態の差別撤廃に関する条約(Convention on the Elimination of All Forms of Discrimination against Women)」と1999年の選択的議定書である。また、1993年に総会が採択した「女性に対するあらゆる形態の暴力の撤廃に関する宣言(Declaration on the Elimination of All Forms of Violence against Women)」も作成した。宣言は、暴力とは家庭内もしくは地域社会で起こり、国家によって容認されてきた身体的、性的、心理的暴力である、と明確な定義を行った。委員会は毎年開かれる会期で合意による成果を発表する。これは宣言と行動計画の実施を加速させる目的で政府やステークホルダーに提供するガイダンスである。
女子に対する差別撤廃委員会(Committee on the Elimination of Discrimination against Women)は23人の独立した専門家で構成され、締約国による条約の実施を監視する。委員会は、締約国が提出する報告書を検討し、男女の平等の原則がどの程度実現されているかの進捗状況を評価する。また、女性に対する暴力のような問題など、当事国がより以上の注意を払うべきだと信じる、女性に影響を及ぼす問題について、勧告を行う。委員会はまた、条約の選択的議定書の規定のもとに、個々の請願を取り上げ、かつ取り調べを行う。