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国際女性の日特集シリーズ
女性職員から見た、職場としての国連
~第7回 国連人口基金(UNFPA)東京事務所 佐崎淳子(さざき じゅんこ)所長~

地球的規模の人口問題を人間の尊厳の問題として捉え、人権とジェンダー平等の観点からの政策づくりと実施の両面で人口と開発の課題に対する取り組みを行っている国連人口基金(UNFPA)東京事務所の佐崎淳子所長に以下の質問をしました。

(1) 貴機関の所長になるまでのキャリアについて教えてください。

世界銀行(World Bank)本部にて人口保健栄養部(ワシントン)、国連人口部(ニューヨーク)、UNFPA(ペルー、ニューヨーク本部、中国/モンゴル/北朝鮮、ネパール、ニカラグア/コスタリカ/パナマ事務所)、国連開発計画/国連ボランティア計画本部 (UNDP/UNV)(ドイツ)に勤務しました。その間、UNFPA事務所代表、所長、副代表、国連ボランティア計画(UNV)でアジア・太平洋・中央アジア、東ヨーロッパ部長等を務めました。これまで、アジア・太平洋地域、中南米・カリブ海地域、中央アジア、東ヨーロッパ地域など、約120カ国を担当しました。

開発分野のなかでは、人口と開発、リプロダクティブ・ヘルス/ライツ、家族計画、女性の地位向上、ジェンダーの平等、ジェンダーに基づく暴力(GBV)削減、HIV/エイズ、ガバナンス、持続可能な開発、開発と平和構築、女性と防災管理・災害対策、平和構築武装解除・動員解除・社会復帰計画、ボランティアリズムと開発等に取り組んできました。世界の人々とより理解を深めるため、映画をみたり本を読んだり、人々と交流しながら西語、仏語、英語、中国語を修得し、早稲田大学卒業後、米国オハイオ大学とジョージタウン大学で非常に興味のあった国際関係論/開発学と人口と開発/人口統計学の二つの修士号を取得しました。

(2) ワーク・ライフ・バランスはどのように保っていますか?

限られた時間のなかで、家族・友人・夫との時間を作ったり、自転車、水泳、ヨガ、散歩、テニス等のスポーツ、旅行、興味のある本や映画に没頭したりして、できるだけ仕事以外の時間を持つようにしています。仕事と生活の時間を分けて、その中でもすべてに優先順位を決めて行動するようにしています。どのくらいの時間を自分自身や家族、友人、夫にかけ、何をしたかということを手帳に書いて管理しています。

(3) 国連で働く中で、女性であることが活かせた経験はありますか?反対に、女性であることが障害となった経験はありますか?

UNFPAで働く中では、開発の対象の多くが女性であるため、自分自身が女性であることが活かせた経験はありますが、女性であることが障害であると感じたことは全くありません。ジェンダーの平等と女性のエンパワーメントは、UNFPAの活動の非常に重要な要素ですので、ジェンダーの平等がかなり明確に組織運営の中で定着しています。ちなみに本部にあるジェンダー・セクションのチーフは男性であり、この課のスタッフは半分が男性です。このように男性の参画を得てからのジェンダーの平等に力を入れています。

TICAD V(第5回アフリカ開発会議)シンポジウム後のメディアインタビューにて。中央の佐崎所長の左隣は、記者からの質問に答えるババトゥンデ・オショティメインUNFPA事務局長(2013年6月)
早稲田大学にて、「21世紀世界における戦争と平和:人口問題、女性、平和」をテーマに講義する佐崎所長
(2012年10月)
 

(4) 貴機関では、世界各地で起きている女性をとりまく問題に対してどのようにアプローチしていますか?また、その活動を通して目指している、女性の社会でのあり方とは何ですか?

HIV/エイズの予防と啓発を促す演劇を興味深く見つめる少女たち

UNFPAは、ミレニアム開発目標(MDGs)の第5目標「妊産婦の健康の改善」におけるターゲットA「2015年までに妊産婦の死亡率を1990年の水準の4分の1に削減する」とターゲットB「2015年までにリプロダクティブ・ヘルスへの普遍的アクセスを実現する」に焦点を当てながら、リプロダクティブ・ヘルス/ライツ、ジェンダーに基づく暴力の防止・撤廃、女性性器切除や児童婚の廃絶、女性の健康・地位向上、ジェンダーの平等と女性のエンパワーメント等を推進しています。

「すべての妊娠が望まれ、すべての出産が安全に行われ、そしてすべての若者の可能性が満たされるために活動する」というUNFPAの活動理念は、1994年にカイロで開催された国際人口開発会議の行動計画(International Conference on Population and Development/ICPD PoA)に基づいています。全ての個人とカップルは、自分が生涯もつ子どもの数と間隔について、自由に責任を持って決定できるべきであり、そのためにはリプロダクティブ・ヘルスと家族計画についてのサービスと情報を全ての人々が享受できるようにすることが不可欠です。また女性が包括的な性教育も含めた質の高い教育を受けられ、自分で意思決定をして交渉ができるように女性の地位の向上を図るべきです。全ての人々のリプロダクティブ・ライツが保障されるべきであり、それを実現するために、リプロダクティブ・ヘルス/ライツの一環として女性性器切除の根絶、HIV/エイズ、性感染症予防、ジェンダーに基づく暴力、児童婚の防止などのために活動しています。国連人口基金の開発の対象の人口は女性、若者、少女、高齢者、移民等です。

ミャンマーで、家族と一緒に笑う70歳の女性。UNFPAによると、世界の平均寿命は68歳

(5) 貴機関の女性に関する人事政策について特徴的な点があれば、挙げてください。

UNFPAは、国連機関の中で最も早く、専門職の女性の比率が50%に達した機関です。20年前から当時の事務局長Dr.ナフィス・サディックの時代(1987-2000) から「あるポストに同レベルの候補者がいた場合、女性の候補者の方を優先する」という非常に明確な方針を組織として実践してきました。さらに、私たちの業績評価システムは、自分の上司を評価することもできますし、女性だからといった差別、セクシャル・ハラスメントやパワー・ハラスメントなどがあれば報告することもできます。また、それに対して組織としてはっきりとした解決策を講じています。異なる文化と価値観を理解することにより誤解を無くし、様々な国の文化に考慮しながらセクシャル・ハラスメントやパワー・ハラスメント、ジェンダーに基づく差別をなくす研修を実施しています。

(6) 国際舞台で活躍したいと思っている女性に一言お願します。

TICAD V(第5回アフリカ開発会議)「テーマ別会合4:ジェンダー平等と女性のエンパワーメントを通じたアフリカ開発の推進」にて。(左から)ラクシュミ・プリ(UN Women事務局長代行)、佐崎所長、ババトゥンデ・オショティメインUNFPA事務局長(2013年6月)

リプロダクティブ・ヘルス/ライツなどの女性の健康の向上や、ジェンダーの平等と女性の地位向上、エンパワーメント、ジェンダーに基づく暴力・差別の撤廃などに関連した仕事がしたいと思っている方は、ぜひUNFPAに来てください。UNFPAでは性別の差別なく、個人の能力が活かされ、自分で責任をもって上に述べたような活動に従事し貢献するために働くことができます。