国際人権章典
国連が創設されて3年後、総会は現代人権法の柱石となった「世界人権宣言(Universal Declaration of Human Rights)」(www.ohchr.org/EN/UDHR/Pages/UDHRIndex.aspx)を「すべての人民にとって達成すべき共通の基準」として採択した。世界人権宣言は1948年の12月10日に採択された。それ以来この日は国際人権デー(International Human Rights Day)として世界中で記念されている。30条からなる人権宣言は、すべての国のすべての人が享受すべき基本的な市民的、文化的、経済的、政治的および社会的権利を詳細に規定している。
人権宣言の第1条と2条は「すべての人間は、生まれながらにして尊厳と権利とについて平等である」と述べ、「人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治その他の意見、国民的もしくは社会的出身、財産、門地その他の地位によるいかなる差別を受けることなく」世界人権宣言に掲げるすべての権利と自由とを享受できると規定している。
第3条から21条まではすべての人間が享有すべき市民的、政治的権利を規定している。
- 生存、自由、身体の安全に対する権利
- 奴隷および苦役からの自由
- 拷問又は残虐な、非人道的もしくは屈辱的な取り扱いもしくは刑罰からの自由
- 法のもとに人間として認められる権利、司法的な救済を受ける権利
- 恣意的逮捕、抑留または追放からの自由、独立の公平な裁判所による公正な裁判と公開の審理を受ける権利、有罪の立証があるまでは無罪と推定される権利
- 自己の私事、家族、家庭もしくは通信に対して、恣意的に干渉されない権利
- 名誉または信用に対して攻撃を受けない権利、そうした攻撃に対する法の保護を受ける権利
- 移動の自由、避難する権利、国籍を持つ権利
- 婚姻し、家族を形成する権利、財産を所有する権利
- 思想、良心および宗教の自由、意見と表現の権利
- 平和的集会と結社の自由に対する権利
- 政治に参加し、等しく公務につく権利
第22条から27条までは、すべての人間が享有する経済的、社会的、文化的権利を定めている。
- 社会保障を受ける権利
- 働く権利、同等の勤労に対し同等の報酬を受ける権利、労働組合を組織し、これに参加する権利
- 休息および余暇を持つ権利
- 健康と福祉に十分な生活水準を保持する権利
- 教育を受ける権利
- 社会の文化生活に参加する権利
最後の第28条から30条までは、すべての者はこの宣言に規定する権利および自由が完全に実現される社会的および国際的秩序についての権利を有し、これらの権利が制限されるのは、他の者の権利および自由の正当な承認および尊重を確保することならびに民主的社会における道徳、公の秩序および一般的福祉の正当な要求を満たすことを専ら目的として法律によって定められている場合のみであり、またすべての者は自分の住む社会に対して義務を負う、と規定している。
「世界人権宣言」の規定は広く受け入れられ、また国家の行為を測る尺度としても利用される。このことから、世界人権宣言は多くの学者によって一般に国際慣習法の重みを持つものだと考えられている。多くの新しく独立した国は、基本法もしくは憲法の中で世界人権宣言を引用し、またはその規定を組み込んでいる。
国連主催のもとに交渉された人権協定でもっとも幅広い拘束力を持つのが二つの国際人権規約、すなわち「経済的、社会的、文化的権利に関する国際規約」と「市民的、政治的権利に関する国際規約」である。1966年に総会が採択したこれら二つの規約は、世界人権宣言の規定を一歩前進させて法的に拘束力のあるコミットメントに変えると同時に、専門家委員会(条約機関)が締約国の順守状況を監視することを決めている。世界人権宣言、二つの国際人権規約、市民的、政治的権利に関する国際規約への第一及び第二選択議定書はともに、国際人権章典(International Bill of Human Rights)を構成する。