その他の人権基準
これらの条約に加え、国連はその他にも人権擁護に関する多くの基準や規則を採択してきた。これらの「宣言」や「行動綱領」、「原則」は、国家が締約国となる条約ではない。しかし、その影響は大きい。単に加盟国によって注意深く起草されたばかりではなく、コンセンサスによって採択されているからである。もっとも重要なもの中には以下のような宣言がある。
- 「宗教および信念に基づくあらゆる形態の不寛容および差別の撤廃に関する宣言(Declaration on the Elimination of all Forms of Intolerance and of Discrimination Based on Religion and Belief)1981年)」は、すべての人の思想、良心および宗教の自由に関する権利、宗教またはその他の信念を理由にした差別を受けない権利を確認している。
- 「発展の権利に関する宣言(Declaration on the Rights to Development)1986年」は、この権利は「奪うことのできない人権である。この権利に基づき、すべての個人および人民は、あらゆる人権および基本的自由が完全に実現されうるような経済的、社会的、文化的および政治的発展に参加し、貢献し、ならびにこれを享受する権利を有する」と宣言した。 さらに、「発展のための機会の平等は、国民および国民を構成する個人の双方の特権である」と述べている。
- 「民族的または種族的、宗教的および言語的少数者に属する人々の権利に関する宣言(Declaration on the Rights of Persons Belonging to National or Ethnic, Religious and Linguistic Minorities)1992年」は、少数者は自己の文化を享有し、自己の宗教を信仰し、かつ実践し、自己の言語を使用し、かつ自国も含め、いかなる国からも出国し、かつ自国へ帰国する権利を有すると宣言している。宣言は、これらの権利を促進し、擁護する行動をとるよう各国に要請している。
- 「人権擁護者に関する宣言(Declaration on Human Rights Defenders、1998年)」は、世界の人権擁護活動家の活動を認め、促進し、かつ保護するよう求めている。宣言は、国家および国際のレベルで、個人的に、または他との共同で、人権を促進し、かつ擁護し、ならびに人権侵害に反対する平和的な活動に参加するすべての人の権利について述べている。 国家は、暴力、威嚇、報復、圧力、その他の恣意的行動から人権擁護者を守るためにあらゆる必要措置を取るよう求められている。
- 「ダーバン宣言と行動計画(Durban Declaration and Programme of Action:DDPA)2001年」は、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連する不寛容の源泉、原因、形態、現代的現象について述べ、そうした人種主義および関連の現象の犠牲となっている各種グループを明らかにしている。また、人種主義および関連の不寛容の撲滅を目的に国、地域、国際のレベルと採るべき予防、教育、保護の措置を示し、同時に効果的な救済、手段、補償措置の提供についても述べている。DDPAはまた、完全かつ効果的な平等を達成するための戦略も策定した。
その他の条約以外の重要な基準には「被拘禁者処遇最低基準規則(Standard Minimum Rules for the Treatment of Prisoners、1957年)」、「司法部の独立に関する基本原則(Basic Principles on the Independence of the Judiciary、1985年)」、「あらゆる形態の抑留又は拘禁の下にあるすべての者の保護のための諸原則(Body of Principles for the Protection of All Persons under Any Form of Detention or Imprisonment、1988年)」、「弁護士の役割に関する基本原則(Basic Principles on the Role of Lawyers、1990年)」などがある。