国際人道法
国際人道法は、武力紛争の際に適用される原則や規則を網羅したもので、そうした事態にあっても人道を基本原則として掲げ、紛争当事者の行為を規制する。文民、負傷者や病人、戦争捕虜のような人々の保護について規定し、また軍事作戦を行う際の手段や方法を規制する。主要な文書としては、1949年の「戦争犠牲者の保護のためのジュネーブ諸条約(Geneva Conventions for the Protection of War Victims)」と1977年に締結された二つの追加議定書(1977 Additional Protocols)がある。
国連は国際人道法の発達に先導的な役割を果たしてきた。安全保障理事会は国際人道法を促進し、かつ尊重させる行動をとり、旧ユーゴスラビア国際刑事裁判所(International Criminal Tribunal for the former Yugoslavia、1993年)とルワンダ国際刑事裁判所(International Criminal Tribunal for Rwanda、1994年)を設置し、かつこれらの制度上の後継機関として国際刑事裁判所残余メカニズム(International Residual Mechanism for Criminal Tribunals、2010年)を設置し、国際人道法の重大な侵害の説明責任を確保した。理事会は、女性や子ども、ジャーナリスト、医療・人道要員など、文民を保護するよう紛争当事者に定期的に呼びかけ、肉体的暴力の大きな脅威にさらされている一般市民を保護するよう紛争事態に展開される国連平和維持活動にこれまでにも増して義務付けている。総会は、国際人道法の範囲と適用を大きく前進させた数多くの文書の作成に貢献した。こうした作業は主に国際法委員会やジュネーブ軍縮会議のような補助機関や総会が開催する国連会議を通して行われた。たとえば、「特定通常兵器使用禁止制限条約(Convention on Certain Conventional Weapons、1980年)」とその「議定書(Protocols)」、「子どもの権利に関する条約(Convention on the Rights of the Child、1989年)」と「選択議定書(Optional Protocols)」、「化学兵器条約(Chemical Weapons Convention、1992年)」、「国際刑事裁判所ローマ規程(Rome Statute of the International Criminal Court、1998年)」、「武器貿易条約(Arms Trade Treaty、2013年)」などである。総会の補助機関である人権理事会は、多くの事実調査団、調査委員会、特別報告者、独立した専門家を任命して国際人道法の侵害など、特定の人権問題について報告させた。
国際司法裁判所も訴訟や勧告的意見などを通して国際人道法の解釈と応用に貢献した。勧告的意見には1996年の「核兵器の威嚇または使用の合法性」などがある。