国際テロリズム
国連は、法律、政治の双方のレベルで、一貫してテロリズムの問題に取り組んできた。国連もまたテロリズムの目標となってきた。アフガニスタンからアルジェリアまで、イラクからパキスタンまで、国連の職員は職務中に、平和と人権、開発のために仕えて生命を失った。
1963年以来、国際社会は、国連とその専門機関、国際原子力機関(IAEA)の主導のもとに、テロ行為を防止するために12件の普遍的な法律文書と5件の改正文書を作成した。たとえば、以下の文書がある。
- 航空機内で行われた犯罪その他ある種の行為に関する条約(Convention on Offences and Certain Other Acts Committed on Board Aircraft、1963年)とその議定書(2014年)。
- 航空機の不法な奪取の防止に関する条約(Convention for the Suppression of Unlawful Seizure of Aircraft、1970年)とその追加議定書(Supplementary Protocol、2010年)
- 国際的に保護される者(外交官を含む)に対する犯罪の防止および処罰に関する条約(Convention on the Prevention and Punishment of Crimes against Internationally Protected Persons, including Diplomatic Agents、1973年)
- 人質をとる行為に関する国際条約(International Convention against the Taking of Hostage、1979年)
- 核物質の防護に関する条約(Convention on the Physical Protection of Nuclear Material、1980年)とその改正(Amendments、2005年)
- 海上航行の安全に対する不法な行為の防止に関する条約(Convention for the Suppression of Unlawful Acts against the Safety of Maritime Navigation、1988年)とその議定書(Protocol、2005年)
- 大陸棚上に所在する固定プラットフォームの安全に対する不法な行為の防止に関する議定書(Protocol for the Suppression of Unlawful Acts against the Safety of Fixed Platforms located on the Continental Shelf、1988年)とその議定書(Protocol、2005年)
- 可逆性爆薬の探知のための識別措置に関する条約(Convention on the Marking of Plastic Explosives for the Purpose of Detection、1991年)
- テロリストによる爆弾使用の防止に関する国際条約(International Convention for the Suppression of Terrorist Bombings、1997年)
- テロリズムに対する資金供与の防止に関する国際条約(International Convention for the Suppression of the Financing of Terrorism、1999年)
- 核によるテロリズムの行為の防止に関する国際条約(International Convention for the Suppression of Acts of Nuclear Terrorism、2005年)
- 国際民間航空についての不法な行為の防止に関する条約(Convention on the Suppression of Unlawful Acts Relating to International Civil Aviation、2010年)
1994年、総会は「国際テロリズム廃絶措置宣言(Declaration on Measures to Eliminate International Terrorism)を採択した。1996年には「1994年宣言補足宣言(Declaration to supplement the 1994 Declaration)」を採択し、総会は、どこで誰が行おうと、いかなるテロリズム行為や慣行も犯罪であり、正当化できないとして厳しく非難した。総会は、国際テロリズムを廃絶するために国、国際のレベルで対策を講じるよう各国に訴えた。総会が1996年に設置したアドホック委員会は、現在、既存の条約が取り残した部分を埋めるために、国際テロ防止に関する包括的な条約について交渉を進めている。
アメリカで起こった2001年9月11日の同時多発テロを受けて、安全保障理事会は、反テロリズム委員会(Counter‒Terrorism Committee)(www.un.org/sc/ctc)を設置した。その任務の一つとして、委員会は、理事会決議1373(2001年)および1624(2005年)の実施状況を監視する。決議は加盟国にある種の義務を負わせたもので、実行への支援も含め、テロリズムに関連した活動を犯罪とすること、テロリストに対する資金供与や安全な隠れ家の提供を拒否すること、テロリスト・グループに関する情報の交換、などが含まれる。
2005年の世界サミットで、世界の指導者たちはあらゆる形態と表示によるテロリズムをはっきりと非難した。サミットはまた、事務総長からの勧告に基づいた反テロリズム戦略を総会で採択するよう加盟国に要請した。
2016年は「国連グローバル・テロ対策戦略(United Nations Global Counter‒Terrorism Strategy)(https://www.un.org/counterterrorism/global-ct-strategy)採択10周年であった。これは総会による全会一致の採択に続いて2006年に打ち上げられた。いかなる形態のテロも受け入れることも、正当化することもできないとの基本的な強い信念に基づいて、戦略は、国家、地域、国際のレベルでとるべきさまざまなテロ対策を概説している。2016年7月、2年ごとに行われる第5回戦略再検討会議で、総会はテロリズムと暴力的な過激主義と闘うグローバルな弾みを強化する決議を採択した。
テロ対策実施タスクフォース(Counter‒Terrorism Implementation Task Force: CTITF)(https://www.un.org/counterterrorism/ctitf/)は、国連のテロ対策活動のシステム全体の調整と一貫性をもたらす目的で、2005年に設置され、2009年12月に政治局の中に置かれた。CTITF事務所は、事務局として機能し、37の国連機関とインターポルからなるCTITF加盟機関を監視し、12の機関間作業部会を通してその作業を進める。国連反テロリズムセンター(United Nations Counter‒Terrorism Centre)は、2011年9月にCTITF事務所の中に設置され、共同で出資した能力強化プロジェクトを通して、戦略を実施するメンバーを支援する。