植民地と人民に独立を付与する宣言
植民地人民による自決への願望が高まり、かつ国際社会の間にも憲章の原則の適用が遅すぎるとの認識が広まったことから、総会は、1960年12月14日、「植民地と人民に独立を付与する宣言(Declaration on the Granting of Independence to Colonial Countries and Peoples)」を採択した(決議1514(XV))。宣言は、外国による人民の征服、支配および搾取は基本的人権を否認するもので、国連憲章に違反し、世界平和と協力の促進にとっての障害であるとのべた。さらに、「信託統治地域、非非自治地域その他のまだ独立を達成していないすべての地域において、これらの地域人民が完全な独立と自由を享受できるようにするため、いかなる条件または留保もなしに、これらの地域人民の自由に表明する意思および希望にしたがい、人種、信仰または皮膚の色による差別なく、すべての権力をこれらの人民に委譲する迅速な措置を講じなければならない」と述べている。総会は、決議1514(XV)において、「独立国家との自由な連合」、「独立国家への統合」および「独立」の三つは、完全な自治を達成するための正当な政治的地位についての選択肢であると定義づけた。
「植民地と人民に独立を付与する宣言」が現在も適用される地域
地 域 | 施政国 | 人 口 |
---|---|---|
アフリカ | ||
西サハラ 1) | ― | 586,000 |
大西洋、カリブ海および地中海 | ||
アンギラ | イギリス | 15,700 |
バミューダ | イギリス | 65,187 |
英領バージン諸島 | イギリス | 28,200 |
ケイマン諸島 | イギリス | 58,238 |
フォークランド諸島(マルビナス)2) | イギリス | 2,500 |
モントセラト | イギリス | 5,000 |
セント・ヘレナ | イギリス | 5,765 |
タークス・カイコス諸島 | イギリス | 36,689 |
米領バージン諸島 | アメリカ | 105,080 |
ヨーロッパ | ||
ジブラルタル | イギリス | 33,140 |
太平洋 | ||
米領サモア | アメリカ | 55,170 |
仏領ポロネシア | フランス | 271,800 |
グアム | アメリカ | 159,358 |
ニューカレドニア | フランス | 268,767 |
ピトケアン諸島 | イギリス | 39 |
トケラウ | ニュージーランド | 1,411 |
1)西サハラ 1976年2月26日、スペインは、同日付でサハラ地域におけるプレゼンスを終了させたと事務総長に伝えた。スペインは、サハラのために樹立された暫定統治への参加を中止したことから、それ以降はサハラの施政に関してはいかなる国際責任も免れると考えることを記録にする必要があると見なした。1990年、国連総会は、西サハラの問題は非植民地化の問題で、西サハラ住民自身が決定すべき事項であることを再確認した。
2)フォークランド諸島 フォークランド諸島(マルビナス)の主権に関してアルゼンチン政府とイギリス政府との間に紛争が存在する。
総会は、1961年、宣言の適用を調査し、かつその実施について勧告する特別委員会を設置した。一般に非植民地化特別委員会(Special Committee on Decolonization)、または単にC‒24と呼ばれているが、正式なタイトルは「植民地と人民に独立を付与する宣言履行特別委員会(Special Committee on the Situation with Regard to the Implementation of the Declaration on the Granting of Independence to Colonial Countries and Peoples)」(https://www.un.org/dppa/decolonization/)である。 特別委員会は毎年開かれ、宣言が適用される地域のリストを検討し、請願者や地域の代表の聴取を行い、地域へ現地調査団を派遣し、地域の政治的、社会的、経済的および教育的状況に関して年次セミナーを開催する。
宣言が採択されて以来、8,000万以上の人々が住む、およそ60の植民地が独立を通して自決を達成し、主権国家として国連に加盟した。総会は、非自治地域の人民が独立も含め、自決への権利をできるだけ早く完全に行使できるように、個別に必要なあらゆる措置をとるよう施政国に要請した。総会はまた、植民地主義を完全かつ早急に撤廃し、すべての国が国連憲章、植民地独立付与宣言、世界人権宣言の規定を誠実に順守するようにあらゆる必要措置をとる決意を再確認した。
「国際植民地主義撤廃の10年(International Decade for the Eradication of Colonialism)、1991‒2000年)」の終了に当たり、総会は2001‒2010年を「第2次国際植民地主義撤廃の10年(Second International Decade for the Eradication of Colonialism)」に指定し、完全な非植民地化を達成するために努力を倍加するよう加盟国に要請した。総会は、2010年12月10日の決議65/119によって、2011年-2020年の10年を「第3次国際植民地主義撤廃の10年(Third International Decade for the Eradication of Colonialism)」と宣言し、第2次10年の行動計画の実施を続けるよう加盟国に要請した。
2016年、国連広報局は、政治局と共同で、「非自治地域を支援するために国連は何ができるか(What the UN Can Do To Assist Non‒Self Governing Territories)」という広報用小冊子を出版した。