国際女性の日特集シリーズ
女性職員から見た、職場としての国連
~第3回 国連アジア太平洋統計研修所(SIAP) マルガリータ・ゲレロ所長~
開発途上国の政府統計職員に統計研修を実施する国連アジア太平洋統計研修所(SIAP)のマルガリータ・ゲレロ所長のに以下の質問をしました。
(1) 貴機関の所長になるまでのキャリアについて教えて下さい。
1977年にロスバニョス大学(UPLB)で、数学の講師として教育界で自分のキャリアをスタートさせました。米国のアイオワ州立大学で統計学の博士号を取得した後、1984年からUPLBで統計学の学部生と院生を教えました。1988年には、UPLBの数理科学・物理学研究所のディレクターに着任し、管理者としてのキャリアを開始しました。私の担当は統計、数学と応用数学、コンピュータ科学と物理学の大学の学術プログラムです。1991年にフィリピンの国家統計局に移った後、約8年間にわたり、技術官、管理官として、多くの経済統計や家計統計の作成を管理してきました。
1999年に国連に就任して以来、統計的な能力開発に焦点を当てて、アジア太平洋地域の数多くの発展途上国のために、技術支援や助言、研修を提供してきました。とりわけ、インフォーマル・セクターの測定、時間利用調査、分類と小地域の統計情報の方法論的研究です。役職やオフィスは多岐にわたり、アジア太平洋国連経済社会委員会(ESCAP)の統計部で統計の地域顧問と上級統計官、国連開発計画(UNDP)のベトナム事務所における統計の上級技術顧問、SIAPの講師・統計官、国連統計部のプロジェクト・コーディネーターなどです。
(2) ワーク・ライフ・バランスはどのように保っていますか?
ワーク・ライフ・バランスを保つには、意識的に努力をしなければならないと考えます。基本的な時間の使い方として、勤務時間中は一生懸命働き、母国にいる家族とは毎日会話する時間を設け、遠く離れた距離関係を縮めています。この点については、技術に感謝!日頃のストレスは、大好きな読書と散歩で解消しています。年次休暇を利用して母国フィリピンに一時帰国するのが、私の最大の楽しみです。
(3) 国連で働く中で、女性であることが活かせた経験はありますか?反対に、女性であることが障害となった経験はありますか?
国連でのキャリアは、ジェンダーの課題を扱うプロジェクト・コーディネーターとしてスタートしました。私自身が女性の専門家ということで、そのポジションを得ることができたのではないでしょうか。国連においては、ジェンダー・バランスに配慮して選考が行われ、私のケースもそうであったのだろうと推測されます。
科学的証拠や特定の例はありませんが、私の周囲を見わたす限り、女性の方が目標値をより高いところに設定しているように思います。そして、私が担当するこのアジア太平洋地域においても、女性の積極的な活躍が期待されていると感じます。
(4) 貴機関では、世界各地で起きている女性をとりまく問題に対してどのようにアプローチしていますか?また、その活動を通して目指している、女性の社会でのあり方とは何ですか?
SIAPは、政府関係者に対して統計に関する研修を行う機関です。データと統計から参加者のジェンダーに関する課題(貧困や開発、教育、健康、労働、雇用などにおける横断的課題としての男女平等と、女性に対する暴力、性と生殖に関する健康と権利、経済的エンパワーメントなど権利に基づく問題)に対する意識を高めることができると考えます。SIAPは、ジェンダー対応の統計の作成・分析に必要となる知識や技能を、政策立案者や計画策定者に伝えることを通じて、女性の権利と地位向上を提唱しています。
(5) 貴機関の女性に関する人事政策について特徴的な点があれば、挙げてください。
SIAPでは、特に専門職の採用において、女性が応募することを奨励しています。私たちの採用選考パネルには、少なくとも1人の女性採用者がいることになっています。
(6) 国際舞台で活躍したいと思っている女性に一言お願いします。
ジョン・F・ケネディー第35代アメリカ合衆国大統領のスピーチにもあるように、組織(この場合、国連)に何ができるかを求めるのではなく、その目的の達成にいかにあなたが貢献できるかを考えてください。女性の権利と地位向上のためには、ジェンダーに関する課題を理解し、立ち上がる勇気を持ち、積極的に発言していくことが求められます。個人の生活でもキャリアにおいても、女性のエンパワーメントを一貫して進めていくことが若い人々に期待されていると考えます。