開発と平和のためのスポーツの国際デー特集シリーズ
スポーツの力を平和と開発のために~第3回~ ユースリーダーシップキャンプ参加者へのインタビュー
(パキスタン、インド)
リーダーシップキャンプ(YLC)」。11日間のプログラムの中で参加者はスポーツに関する様々なレクチャーやアクティビティー、さらには日本の文化体験などを通じて、「スポーツを通した開発と平和」を学びます。今回は、主にアジア地域から14カ国から30名が参加し、新たな仲間との出会いや、スポーツの持つ力を体感しました。未来のスポーツ界を担う若者の、生の声をお伝えします。
Zainab Saleem (ゼナブ・サリーム, パキスタン)
日本からおよそ6500km離れたイスラム国、パキスタン。イスラム教の服装規定や、古い慣習により、女性たちはスポーツをすることに制限を感じることがあります。着用するユニフォームで、肌の露出が増えてしまうなどの理由からです。しかし、パキスタンの首都イスラマバードを拠点に活動するNGO「スポーツ開発財団」は、このような理由でスポーツをする機会を持つことができない女性や子どもに、年齢やジェンダーに関係なくスポーツの大切さを教えたり、様々なアクティビティーを展開したりしています。また、ミレニアム開発目標(MDGs)の達成にも注目し、活動を行っています。今回はスポーツ開発財団の一員であるゼナブ・サリームさんにお話を伺うことができました。
「スポーツの大切さは、身体的なことを鍛えることの他に、『チームワーク』『フェアプレー』といった精神的なことを学べる点にあります。スポーツを通して学べるものの大切さを若者に伝えて、『相手のことを敬う気持ち』や『寛大な心』を養うことも目指しています。スポーツを基にこうした教育を行うことで、世界の平和を考えることにつながると思います」と力強く語ります。
「このキャンプでは、たくさんの新たな知識とアクティビティーを習得し、自分の所属する財団をさらに良くするためのフィードバックをパキスタンに持ち帰りたいです。ここでの学びをもとに、特にスポーツの重要性を、まだあまりわかっていない人々に伝えたいんです。きっと彼らの目には新鮮に映るし、特に小さな子どもは気に入るはず。そしてスポーツで人々を力づけたいです」スポーツをすることが難しい社会で生きる彼女だから、スポーツの本当の素晴らしさがわかる。そんな彼女だからこそ、女性や子どもをエンパワーメントできるのです。このキャンプでの経験を踏まえて、ゼナブさんはスポーツの魅力をより多くの人々に伝える「架け橋」として、今後もスポーツに関わっていってくれるでしょう。
Rajni Jha (ラジニー・ジャ, インド)
ラジニー・ジャさんはインド中部のマディヤ・プラデーシュ州で、インド国際パラリンピック委員会に所属しています。彼女は5歳の時から水泳をスタートし、水泳選手として全国・国際大会で素晴らしい功績を残してきました。彼女は幼い頃、右足にポリオを発症しました。当初は、ポリオによって動かしづらくなってしまった足のリハビリの水中治療として水泳を始めましたが、その結果はめざましく、足だけでなく身体も動かしやすくなってきたのです。それから数年後、家族の支えもあり、本格的に「競技」として、かつては治療の手段であった水泳と向き合うようになりました。
「人間は誰しも悩みや障害を持っています。一方で、誰もが『強み』も持っているのです。自分の『強み』に気付き、それを使って人のためにできることを実践することが私のモットーです」こうしてラジニーさんはインド国際パラリンピック委員会に所属し、自身の特技を生かして水泳コーチとして活動しています。インドでも、男女の間の平等はまだまだ達成されていません。家庭で家事をし、教育も受けることができない女の子が多く存在します。スポーツは、そういった環境に暮らす女の子には極めて遠い存在です。ラジニーさんは、そういった教育やスポーツの機会が得難い女の子に無料で水泳指導をしています。2年前にたった8人の生徒で始まったこの活動も、今や120人もの生徒を抱えるほどになりました。
「このキャンプでは、新たなスポーツを知り、体感し、さらに新しい知識を得ることができるのです。帰国後は、ここで得たことを水泳指導に積極的に用いて、将来的には水泳以外のスポーツも含めた子ども向けのスポーツ活動をより包括的に展開したいです」と語ってくれました。
「あきらめないで、望みを捨てないで」と若者へメッセージを呼びかける、明るく前向きなラジニーさん。自分の「強み」を軸に、スポーツの持つ力を信じて、若者の芽を大切に育んでいます。